PoC Ground Tokyoは、仮説検証や社会実装の検証にむけた実証実験の機会と場所を提供し、SUの急成長を促すプログラムです。本ページは実際にプログラムに参加したスタートアップ企業の声をご紹介します。
本事業にエントリーを検討されているスタートアップの方、スタートアップとの協業を行いたい方々のヒントになれば幸いです。
第1回目は、2020年度採択企業で、水産養殖にAIやIoT、衛星リモートセンシング等の技術を活用することで、持続可能な水産養殖の実現に取り組むウミトロン株式会社(以下、ウミトロン)Market Success / 村上千賀子さんにインタビューしました。
本事業で、ウミトロンの技術を活用して育った、おいしい・安心・サステナブルなシーフード「うみとろん(実証当時は「うみとさち」)」の販売に向けた実証実験を都内大手のスーパーマーケットで行いました。「うみとろん」は立ち上げから1年間で販売人数累計100万人を達成しています。
当時、ウミトロンの技術を活用して生育された魚をブランディングし、消費者向けに販売することを新規事業として考えていました。しかし、潤沢な予算はありませんし、どのように進めていいのかを模索していた状況でした。
PoC Ground Tokyo(以下、PoC)は、何を実証したいのかおおまかな構想段階でも応募でき、採択後には実証実験計画を運営事務局が一緒に考えてくれたほか、協力企業とのマッチングまで受けられることを知り、「まずはやってみよう」と思い、参加を決めました。
3つあります。
1つ目は、実証実験のパートナー企業を一緒に探してもらえることです。
私たちは当時、実績もコネクションもなく、パートナー企業候補がいない中でプログラムの採択を受けましたが、その後のマッチング支援で、運営事務局から東急株式会社さん経由で、同グループ内でスーパーマーケットチェーンを展開する株式会社東急ストアさんをご紹介頂きました。
通常、水産物など食品を提案する際は、調達部門のバイヤーなど現場の担当者に商品を提案することからはじめます。しかし、PoCでは、商品提案の前に、実証実験協力の依頼として株式会社東急の新規事業担当に、当社が実証の先に目指す将来のビジョンを直接お伝えすることができます。ここで合意ができたことで、社を挙げてご協力いただける体制が整い、実証実験を実現させることができました。
また、東京都主催事業で採択されたプロジェクトということが、「東京都も期待するような取組みなので協力していかないといけない」という現場の空気感を作り、後押しになりました。私たちの目指すゴールがより東急ストアの店舗の方々にも伝わりやすくなっていたと思います。
2つ目は、実証実験の費用を負担してくれること、その柔軟性が高いことです。
国等が運営する助成金事業を検討していましたが、応募時点で詳細な実施計画や実績が求められるものが多く、応募のハードルが高いと感じていました。PoCは、不確実性がある中でも応募できるうえ、やむをえず計画変更が生じた際も柔軟な対応が可能で、予算を有効に使うことができます。これはとても助かりました。
3つめは、運営事務局の存在です。
十分な検討を経て臨んだ実証実験でも、やはり計画通りに進むとは限りません。そのような中で、事務局は「次はどうすべきか」を一緒に考えてくれる心強い存在でした。助成金事業の場合は、基本的に自分たちで提案書をつくりプレゼンをすることで採択・不採択が決まり、その後の実施も自分たちだけで行いますが、PoCは運営事務局の方が相談役となって一緒に考えてくれる、とても良い事業だと思います。
PoCで実績を作れたことは大きいです。
おかげで、取り扱いを希望する量販店や、うみとろんブランドで魚を売りたいという生産者が増え、パートナー企業の輪が広がりました。その後も継続して店舗営業やECサイトを立ち上げることにより、「うみとろん」は立ち上げから1年間で販売人数累計100万人を達成することができました。
販売事業までの流れができたことで、当社は生産から消費までをトータルサポートできるようになり、養殖業者さん向けに販売していた製品を前向きに検討して頂きやすくなりました。
2020年は新型コロナウイルスの影響で魚の消費が落ちていましたので、養殖業者さんから「魚の販売までやって頂けるのであれば、製品を導入したい」と言っていただけたことはとても嬉しかったです。
新規事業として始めたサスティナブルシーフードの販売が、既存事業にもいい影響を与えています。
この実証実験があったからこそ、会社としても次のステージに進むことが出来たと思っています。
新たな事業の柱が出来たことにより、会社としても大きく成長しました。実証後の2022年6月にプレシリーズBとして総計12.2億円の資金調達を実施しました。(2018年のシリーズAの資金調達12.2億円と合わせて、総計24.4億円の調達となります。)
これは、私自身も模索しているところではありますが・・・
大企業との実証実験に限らず、企業を超えてパートナーシップを組むプロジェクトでは、関わる人数も多く調整業務がより難しくより重要になると思います。今回の実証実験では、大企業側の関係各所の調整が得意なキーマンを巻き込んでいくことが成功の鍵だと感じました。会社やグループ内で顔が広くインフルエンサーのようなキャラクターの方や、企業間連携やスタートアップ支援に関わる業務にインセンティブのある方を巻き込むことができれば、コミュニケーションが円滑に進んでいきます。東急さんとの実証実験では、そういった方と一緒に取り組むことが出来たので、非常に盛り上がりました。
また、これは一般的なことになりますが、業界が違うと、当たり前とされている習慣やコミュニケーションスタイルが違うので、予想もしなかった誤解を生んでしまうことがあります。そのため、私たちの当たり前が相手の当たり前でないということを念頭に置き、会話をすることが大切だなと思いました。
―村上さん、ありがとうございました!
ウミトロンさんがこの実証実験を経て、どのように事業を拡大されたのかをお伺いし、とてもワクワクしました!また、本事業に参加を検討されている方や、実証実験に取り組んでいる方のヒントになったと思います!本日は、ありがとうございました。
ウミトロンは、成長を続ける水産養殖にテクノロジーを用いることで、将来人類が直面する食料問題と環境問題の解決に取り組むスタートアップ企業です。シンガポールと日本に拠点を持ち、IoT、衛星リモートセンシング、機械学習をはじめとした技術を用い、持続可能な水産養殖のコンピュータモデルを開発しています。私たちは世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、より安全で、人と自然に優しい「持続可能な水産養殖を地球に実装する」ことを目指しています。
ウミトロンは、持続可能な開発目標「SDGs」14番目のゴール「海の豊かさを守ろう」を支援する活動を行なっていきます。